Chapter 01
イカソーメン、イカ飯、塩辛——。函館の食文化はイカなしでは語れない。かつて函館港には、水揚げされたスルメイカが山積みになっていた。漁師たちの声と潮の匂いが、街の空気だった。
Chapter 02
函館港の水揚げは1985年にピークを迎えた。年間約9.7万トン。これは現在の約35倍に相当する量だ。当時、函館はスルメイカ漁獲量で全国トップクラスを誇っていた。
1985年水揚げ量
97,000トン
Chapter 03
1990年代から減少傾向が始まった。海水温の上昇、北方漁場への回遊ルート変化、そして乱獲——複合的な要因が重なった。2005年には早くも半減以下となった。それでも、漁師たちは「来年は戻る」と信じていた。
Chapter 04
2020年の水揚げはわずか7,200トン。ピーク比で-93%。廃業する漁師が続出し、イカ専用の干し場は空っぽになった。函館朝市のイカ釣り体験も、多くの日は「獲れないので中止」になっている。
ピーク比減少率
-93%
Chapter 05 / Forecast
現在の減少トレンドが続いた場合、2035年の漁獲量は200トンを下回ると試算される。採算が取れる水準(推定3,000トン以上)を2028年頃に割り込む見通しだ。
「イカの街」というアイデンティティが消える前に、
私たちは何を残せるだろうか。
データは冷徹に、しかし正直に現実を示す。函館のイカ漁の未来は、 海の温暖化という地球規模の問題と不可分に結びついている。 一地方の漁業問題ではなく、気候変動が地域アイデンティティを奪う最前線の出来事として向き合う必要がある。